営業マンを真剣に育てたい社長・管理職が知っておくべき7つのポイント

能力のない・成績の悪い営業マンをやめさせる前にすべきこととは?

今回は、営業マンを真剣に育てたいと思っている社長・管理職の方がやっておくべき7つのポイントについて2回に渡ってお話しします。

  • 部下が思うように営業成績を上げてくれない
  • 部下が危機感をもって仕事に臨んでくれない
  • 部下にやる気がない
  • 部下が自己管理できない。

そのようにおっしゃる社長さんや、営業管理職の方の声を聞くことがあります。

私の営業セミナーにご参加くださった方からもよく聞きます。

売り上げがあげられないなどの能力のない営業マンに対して、「できればやめてもらいたい」と考えていらっしゃる社長や管理職の方もいらっしゃるかもしれません。

今いる人材が、こんなに使えないとは思わなかったというのが本音かもしれません。

「人は資源」「人財」と言いながら、今いる営業マンの力を使えておらず、新しい優秀な人材を採用したいと考えている管理職の方も多いことでしょう。

ここで社長や管理職の方に考えていただきたいことは、「上司の仕事とはなにか?」ということです。

上司の役割、仕事は何かを考える上で、「上司の戦略を立てる実力が部下の戦術力(販売力)を上回る」という事を認識していない営業管理職の方が少なからずいます。

上司が何の全体計画もなく、ただやみくもに「お客様のところへ行け」という指導をしていたならば、部下の能力を生かせるはずがありません。

また、上司の指示が根本的に間違っている場合、営業マンが正しく行動しても良い結果がでるはずもありません。

作戦、計画を立てるのは上司の仕事であり、部下はその指示を正しく実行するのが仕事だからです。

これは、「上司の戦略実力のレベルが営業マンの戦術力(販売力)を上回る」ということを理解していないために起こることです。

社内研修後に、管理職の方から時々、「部下に青木さんの研修を受けてもらったので、あとは部下の自主性にまかせます」という言葉を聞きます。

こう考えていらっしゃる管理職の方は多いのですが、実は、管理職の仕事を放棄しているとも言えるのです。

良き管理職になるには自分が責任をもって担当すべき役目を正しく認識し、会社あるいは部署の仕事の戦略やしくみをつくり、部下ができるように訓練するところまでする必要があります。それができていないにもかかわらず、「部下が○○しない」というのは、実は「上司が上司としての仕事をしていない」と言えるのです。

厳しく聞こえるようですが、私はこのように考えています。

管理職の方がきちんと営業戦略を立て、部下が動ける体制をつくることに成功したならば、会社や部署としての営業成績の底上げをすることができるのです。

その結果、会社や部署として、人が育つ風土ができますから、会社の外側に「できる人材」を探しに行かなくてもよくなります。

また、社員の定着率も上がります。

人材、後継者の問題も、解決しやすくなるのです。

それらのことが、結果的にコストダウンにつながるとも言えます。

よき連鎖を生むことにつながります。

能力のない営業マン・成績の悪い営業マンをやめさせる前に、できることはたくさんあるのです。

では、営業マンを真剣に育てたいと思っている社長・管理職の方が、やっておくべきこと、知っておくべきこととはなんでしょうか。

営業戦略を立てたり、部下が動ける体制をつくるために必要なことを、7つのポイントにまとめてみました。

営業マンを真剣に育てたいと思っている社長・管理職の方が知っておくべき7つのポイント

  1. 自分の目で営業エリアを実際に確認しているか
  2. 自分の能力の客観視ができているか
  3. スランプの経験とそれを自分の工夫で乗り切った経験があり、整理されているか
  4. 部下を指導するときに、結果だけではなく、プロセスを見ているか。また、教育の効果を信じているか
  5. 公平性、自分自身も営業マンであるという自覚があるか
  6. 上司自身が営業や経営の勉強をしているか
  7. 自分が去った時のことまで考えて部下を指導しているか

(1) 自分の目で営業エリアを実際に確認しているか

強い競争相手がいる地域かどうか、そうでない地域か、どういう客層のお客様が多いのかも全く分からずに戦略を立てることはできません。

部下のテリトリーを自分自身も歩いて実地見聞することで、分かることもあります。

社内にこもっていて外部の情報に疎くなってはいないでしょうか。

外部の情報収集だけではなく、部下に指示を出すときにも、部下の営業エリアを自分の目で確認しているかどうかが、信頼関係づくりにも関わってきます。

例えば、部下が「今日の訪問は○と○と○です。」と報告に来た時に、担当地域の距離感がないと「午後から緊急会議があるから昼までにもどってきなさい。」とわからないままに指示を出してしまうこともあります。部下にしてみれば、「往復したら何時間かかるか分かってないの?」と上司を不信の目で見てしまい、以後、上司の指示に従わないということもあるのです。

(2) 自分の能力の客観視ができているか

営業マン時代、あまり実績が良くなかった時と実績を上げた時の両方を経験しており、特に実績を上げた時の中味が、他の人からもらった特定のコネや有利な条件のもとで出したものであるかなど、客観的に分かっているかどうかも大切です。

能力の客観視をするためのヒントとして、一度、営業マンとしての出発点を思い出して分析しておくと、部下の指導に役に立ちます。

管理職の方の営業マンとしての出発点が恵まれていた人の短所、恵まれていなかった人の長所、短所を書いておきますので、ご自身の経験に照らして分析してみてください。

自分がどのタイプに当てはまるかを知って短所が出ないように訓練する必要があります。

上司自身の出発点が恵まれていた人

●短所

部下が苦労して契約をとってきても 気持ちが分からないので簡単に考えてしまいがちです。

そのために、契約を取ることができて当然と考えている場合があり、契約に関すること、その他の業務に関することでも、心から部下を誉められない傾向があります。

シンデレラ社員(器用でない人や外見からは才能が見えず、現在成果は出せていないが、方法などにより成果を上げられるようになる人)の能力を開花させることができず、またはつぶすことがあります。

ご自身で創意工夫の経験がなかった場合、部下に合わせた具体的な解決、アドバイスが出来ないため、部下指導のところで苦労をされるかもしれません。

上司自身の出発点が恵まれていなかった人

●長所

シンデレラ社員(起用でない人。外見からは才能が見えない人)の能力を見抜き、開花させられる傾向があります。そうした社員は実際に実績を上げるまで時間かかかりがちですが、その開花するまでの時間に耐えられる人が多いのです。

その背景に、部下の能力の見切りが早すぎず、勉強・教育・訓練の効果を信じているということがあげられます。

契約を取る大変さが身に染みているので、契約を取ってきた部下の気持ちが分かり、部下との信頼関係を築きやすいタイプでもあります。

●短所

時間に耐えたり、できない人を育てることができるために、逆にすぐに結果が出る人や苦労をしないでできる人を良く思わないタイプの人もいらっしゃいます。

もちろん、全員がそうというわけではなく、自分と同じタイプが好きという傾向のある人が 悪い方に出た場合にありうることです。

部下の能力判定の前にまず、自分自身の上司というマシンの能力、性能、特徴の客観的な判定が大切です。自分はどういう考え方をする特徴があるか、判断の基準はなにか、何を経験してきたのかなど、振り返ってみてください。

(3) スランプの経験とそれを自分の工夫で乗り切った経験があり、整理されているか

能力の客観視とともに必要なことが、経験の整理です。

部下指導をするうえで、一番の宝庫になるのが管理職の方ご自身の経験なのです。

  • スランプで苦しんでいる部下に、どのようにしてそれを乗り切ったら良いか具体的なアドバイスができるか?
  • 色々なクレームやトラブルに困っている部下に対して、なにをアドバイスするのか?
  • こうしたことは、スランプ、クレーム、トラブルを乗り切った経験があるどうか。
  • そして、その経験が整理されて使える状態になっているかどうか

これらがポイントになります。

整理しておくとよい経験の例を挙げておきますので、一度整理されることをおすすめします。

  • スランプで苦しんだこと
  • スランプを乗り切った経験について
  • お客様から理不尽な事をされた経験があるか
  • 上司から理不尽なことをされた経験があるか
  • 才能に頼り過ぎず、創意工夫の経験があるか

(4) 部下を指導するときに、結果だけではなく、プロセスを見ているか。また、教育の効果を信じているか

営業は結果で評価されがちですが、部下の営業の成果だけではなく、プロセスを見ているかどうかも重要です。部下の何を見て、どう評価しているかが、そのあとの営業成績に関わってくることもあります。

その月に売り上げ達成できたら「良くやった」、達成できなかったら「何をやっているんだ」的な指導をしていないでしょうか。また、成果の管理だけではなく、売り上げのプロセス管理をしているでしょうか。

また、部下に苦言を呈する時、頭ごなしに怒らず、なぜそのような行動をしたのかの背景や考えを聞く習慣があるでしょうか。

部下の資質として大事なことは、すぐに営業成績を上げられるかどうかよりも、

  • 上司が見ていないところでも、しっかりとやるべきことをやっているか
  • 愚直なぐらい地道な積み重ねができるか
  • 勉強熱心か

ということにあります。

部下にも才能がすぐに出る人とそうでない人がいます。早咲き、遅咲きの人がいるのです。

その辺りのことをわかっていないと、シンデレラ社員をつぶす上司になってしまいます。

シンデレラ社員とは、才能や能力を見分ける上司に恵まれていないため埋もれている社員のことです。現在、実績を上げていなくとも、仕事をする過程で頭角を現してくる可能性がある人でもあります。

シンデレラ社員をつぶさないためにも、結果だけではなく、部下の仕事のプロセスや陰の努力を認め、なおかつ、教育の効果があるということを信じて待つことができることが大切です。

減点法だけで見ずに加点法で見ることも必要なのです。

平凡な上司は自分に似ている人は理解できるが、そうでない人は排除する傾向があります。上司自身の能力、経験などから、自分を知り、部下との違いを認めて評価する部分も持っておかれるとよいでしょう。

優秀な管理職や上司に求められる能力の中で一番大事なのは、部下の気持ちが分かるということです。

部下の人と信頼関係を築くには忍耐も気力も時間も必要です。そして、その信頼関係の前にあるのは部下に対する理解です。

部下の問題を色々言われる管理職の方がいらっしゃいますが、人は自分のことを理解してくれる人の話には耳を傾けるものです。

部下が上司の自分から見たらくだらないと思う意見や質問をしてきても、頭ごなしに否定しないで聞くことも必要です。何回かに1回ぐらいは素晴らしいアイデアや情報や意見の場合もありますし、何度か聞くうちに部下の思考のパターンもわかってきます。

大切なのは意見、質問をしてきた事の勇気をほめることです。この人は自分の話を聞いてくれないという認識が部下にいったん入るとその後、その人からの役立つ情報があっても二度と入ってこなくなります。

結果だけではなくプロセスを評価するという考え方は、部下指導だけではなく、部下を介してあげられる情報収集という点でも落としてはいけない視点になります。

(5) 公平性に物事を考えることができ、自分自身も営業マンであるという自覚があるか

管理職になると、現場を離れて直接的な営業の仕事をしていない場合もあるでしょう。それでも、「自分自身も営業マンである」という自覚を持っていることが必要です。「自分自身も営業マンである」という自覚をもって、お客様、部下に接する姿勢があることが仕事をしていきます。管理職、上司であるという以前に、人として善人であるか、裏表がないかということが問われていると考えてください。

  • お客様が本当に間違っている時、部下に責任を押し付けていないか。
  • 自分が外から営業されたときに失礼な事をしていないか。
  • 営業マン同士のトラブルに関して公平なジャッジができるか。
  • 責任を取りたくないので無関心を装ったりしていないか。

見るべき視点を挙げればキリがありませんが、人として恥ずかしくない態度で部下、お客様、お客様以外の人に接しているか点検してください。

私の経験でコンサルティングするときにコンサルティングをあまりお受けしたくないのは、部下にお客様のところに売り込みをさせていながら、自分が反対の営業をされたときに、あまりよろしくない対応をしている社長さんや営業責任者の方です。

何が言いたいかというと人の気持ちが分からない人という事です。

忙しくても無理して対応するべきと言っているわけで訳ではなく、ひどい断り方をしても、丁寧に断っても1円もかかる訳ではないという事を言いたいわけです。

お客様や部下に対して馬鹿にするような呼び方をしていないでしょうか。

以前に読んだ本に、ある医者が患者のことを、死体を数えるように何体と呼んでいたエピソードが書いてありました。

「昨日は患者が40体、今日は患者が70体来たよ。」というような呼び方です。そもそも自分がかかわる対象を馬鹿にしておいて経営がうまくいくはずもありません。

あなたは陰の呼びかたのまま、本人を前にして話せますか?

また、あるところで経営相談があった時、その経営者の方が顧客とスタッフに対してものすごく卑下する呼び方をしていたので、集客うんぬんの前にその仕事に対する姿勢が一番問題と感じたので、「根本的な問題はそこにあるのではないですか。」とお伝えしたこともあります。

上司自体が生産することはなく、顧客や部下の働きの上に成り立っているという事実を考えると、へりくだる必要はありませんが、良き人として物事を公平に見、様々な人に接することが大切ではないでしょうか。

このあたりになると、上司、管理職である前に人としての品性や人間性の問題になってきます。

上司、管理職である方が営業で外からかかってきた人に対してどのような対応をしているのか、顧客や部下への対応の仕方を部下は見ています。

部下への指導、会社の経営にとっても、土台になる考え方でもあります。

(6) 上司自身が営業や経営の勉強をしているか

営業を体系的に学んだことがある人は、ほとんどいないのではないかと考えています。

管理職をされている方も、自分の経験や先輩たちの指導から学んだことが多いのではないでしょうか。

本はその点で、物事を体系的に学ぶことができる利点があります。

部下の悩みに応えるために、また、ご自身で営業の戦略を立てるためにも学び続けていることは上司としての最低条件になっています。

自己啓発系の本を含め営業、経営の本を最低100冊、できれば300冊以上は読んでいて、その本で学んだことを実際、営業の現場で使って自分のものとしているでしょうか。

例えば、業種によって違う営業方法、会社の規模によってかわる上司の役割、押しと引きの営業の違いと使い分けなど、経験のない未知のことであっても学ぶことが会社や部署の実績、部下の指導などに影響を与えます。

ぜひ、気になった本から読んでみてください。

(7) 自分が去った時のことまで考えて部下を指導しているか

多くの管理職・上司は、その部署にいる間のことだけを考えて指導をしていることが多いのではないでしょうか。

部署異動の多い会社ほど、短期の目線で部下の指導や、強引な方法や短期で成果があがる方法に走りがちです。

自分が在籍しているときの実績だけ考えていて、現在の部下の仕事の仕方が長期的に見て成功し続けるのが可能かの判断が入っているか、育てるという考えが入っているか、よく点検してください。

部下は、どのような上司についたかで、その後の成長度合いが変わります。

私の経験から言うと最初の方にご縁のあった上司の運、不運でその新入社員のその後の運命が決まってしまいます。そういう意味で人の能力の見方を色々な角度から見て指導できれば理想的です。

あなたの部下として働いているときには成果を出すことができなかったとしても、長い目で見て、よい営業マン人生を送ることができるように、行動や考え方を仕込んであげてください。

以上、「営業マンを真剣に育てたいと思っている社長・管理職の方が知っておくべき7つのポイント」を述べてきました。まず、できるところから、やってみてください。

また、考え方としては理解できるけれども、どこから手をつけてよいのかわからない、というところもあることでしょう。

そう感じられたならば、セミナー「ランチェスター社長塾」や営業スキルアップ研修をご検討ください。


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